松浦寿輝
筑摩書房、1995年6月1日、410ページ
ISBN=9784480823182
[知の空間=空間の知 4]
炎に包まれるオルセー パリを燃やしてしまえ。日に日に「現代化」しつつある一八八〇年代末のフランスの首都に、「現在」への屈折した憎悪を抱えこみつつ暮らしていた奇矯...kine Reprints, Genève, 1972, p.148. ★二──拙著『エッフェル塔試論』(筑摩書房、一九九五年)、序章「『無...
[建築家的読書術]
五年前、はじめて大学に研究室を持つことになったとき、研究室の方向性を明確に示すために「難波研必読書二〇」をリストアップすることにした。大学生にはちょっと無理かも...学芸文庫、一九九九)。 一四、松浦寿輝『エッフェル塔試論』(ちくま学芸文庫、一九九七)。 一五、...
『10+1』 No.38 (建築と書物──読むこと、書くこと、つくること) | pp.86-88
[鼎談]
建築と身体、ジェンダー 五十嵐── 今回の特集は、もともとは身体、ジェンダーなどの問題からスタートしました。僕は一九九〇年頃から美術史におけるジェンダーの問題に...が、マクロに見るとやや循環的かなと。『エッフェル塔試論』(筑摩書房、一九九五)は面白いけれど...
『10+1』 No.14 (現代建築批評の方法──身体/ジェンダー/建築) | pp.62-81
[1990年代以降の建築・都市 1]
香港──一九九一年 ちょうど一〇年前、初めて香港を訪れたときのことだ。過度な疲労のために、中国から陸路で行くことを断念し、上海から香港まで三泊四日の船の旅を選ん...九九)などがある。 ★一八──松浦寿輝『エッフェル塔試論』(筑摩書房、一九九五)。 ★一九──Mut...
『10+1』 No.25 (都市の境界/建築の境界) | pp.177-187
[論考]
博覧会と観光 一九七〇年の大阪万博は開催期間中に六四〇〇万人を超える入場者を数えたが、その数は国内の観光量にも反映された。七〇年に国民が一泊以上の観光旅行に出か...二三日号、広告欄。 ★三一──松浦寿輝『エッフェル塔試論』(筑摩書房、一九九五)。 ★三二──外...
『10+1』 No.36 (万博の遠近法) | pp.164-177
[知の空間=空間の知 7]
ファロスとしての「知」 これは必ずしもわれわれがここで論じている一九世紀西欧という特定の歴史的文化圏に限ったことではなかろうが、「知」の主体としての「人間」と言うとき、その「人間」という言葉がインド=ヨーロッパ系の言語ではしばしば自動的に「男」を意味するという事実それ自体によっても示唆されるように、少なくとも共同体の成...
『10+1』 No.11 (新しい地理学) | pp.2-15
[知の空間=空間の知 8]
けだものが脱走する 一八五〇年三月二〇日の夜更け、パリ植物園附設の動物園(La Ménagerie)の檻から、一頭の巨大な狼が脱走する。鎖を引きちぎり庭園の暗がりの中に駆けこんだ獰猛な野獣を捕獲すべく、銃で武装した捜索隊がただちに編成される。だが、現在のように至るところ庭園灯で煌々と照明されているわけではない時代のこと...
『10+1』 No.12 (東京新論) | pp.2-17
[知の空間=空間の知 6]
選別と階級 周囲三六〇度の全方位から迫(せ)り上がってくる「無限」の脅威と正面から向かい合ったとき、「知の主体」は、「中心」という特権的な一視点から「全体」を一望の下に所有しうるという「パノプティック」な全能感を享受する一方、同時にまた、生の有限性に拘束されている者ゆえの無力感にうちのめされざるをえない。「肉は悲しい、...
『10+1』 No.10 (ル・コルビュジエを発見する) | pp.2-17
[知の空間=空間の知 3]
ゲームの上演 大英博物館の円形閲覧室が完成した年の翌年に当たる一八五八年のとある晩、まだ二〇歳を出たばかりの一人のアメリカ人が、パリのオペラ・ハウスの桟敷席でチェス盤の前に座り、「パリの名士連(トウー・パリ)」とも言うべき盛装した紳士淑女たちの好奇のまなざしを浴びていた。前年に開催された第一回アメリカ合衆国チェス・トー...
『10+1』 No.07 (アーバン・スタディーズ──都市論の臨界点) | pp.2-15
[知の空間=空間の知 1]
メソポタミアから近代まで 一九世紀中葉、「近代」という名で呼ばれる未曾有の記号の布置を準備しつつあった西欧の大都市に、或る「知の装置」が出現する。ロンドンの大英博物館の円形閲覧室、そして、パリ国立図書館の、これもやはりおおよそ円形をなす〈印刷物部門(アンプリメ)〉閲覧室という二つの屋内空間がとりあえずそのほぼ理想的な範...
『10+1』 No.05 (住居の現在形) | pp.2-15
[知の空間=空間の知 5]
テスト夫人の手紙 「この種の男の生存は現実界においてはせいぜい四、五〇分を越えることは不可能だろう」とヴァレリーの言うあの「神のない神秘家」テスト氏に、ここでもう一度登場してもらうことにしよう。われわれはすでに、この虚構の人物が耐えている極限的な孤独を、二重の様態の下に描写している。復習してみるなら、一方に、劇場の桟敷...
『10+1』 No.09 (風景/ランドスケープ) | pp.2-13
[知の空間=空間の知 2]
バシュラールの樹木 一九世紀西欧の巨大円形閲覧室の中心点に登場した、二律背反的な「知の主体」としての「人間」。彼の運命は、全能と無力、無限と虚無という両極の間で引き裂かれてあるほかないというその存在様態のゆえに、必然的にある悲劇的な相貌を帯びざるをえない。むろんそれは、ロマン主義的とも形容されえよう勇壮なパトスの昂揚と...
『10+1』 No.06 (サイバーアーキテクチャー) | pp.2-15