1963年生まれ。社会思想、台湾研究、日本文学。明治大学政治経済学部助教授。
(最終更新:2009年3月31日)
[新・都市の下層民 7]
0 日本とアジアの都市との最大の違いは、働く人間が都市の内部にどう組み込まれているかということにかかっているような気がする。例えば、台湾の都市を歩いてみる。公園の公衆トイレに入ろうと思えば、ちり紙売りのおばさんがいる。繁華街の路上には、食べ物を売る屋台が立ち並び、交差点には、政府が発行する宝くじを売る老人がいるし、また...
『10+1』 No.20 (言説としての日本近代建築) | pp.34-35
[新・都市の下層民 3]
0 ある日、突然の電話。電話の主の彼女は、数年前に二、三度会ったことしかない、特に親しくもない知り合いの一人であった──「Oさん、どこに居るの?病院の地下室にいると思っていたのに」。彼女は、北海道のとある精神病院の閉鎖病棟から電話を掛けているらしい。実際のところ、本当かどうか分らない。確実なことは、彼女は、何らかの方法...
『10+1』 No.16 (ディテールの思考──テクトニクス/ミニマリズム/装飾主義) | pp.38-40
[新・都市の下層民 8]
0 ベンヤミンは、卓越なるエッセイ「パリ──一九世紀の首都」の中で、「新しいものが古いものと浸透し合う」という定式を提示している。そして、この定式に対してアドルノは、ベンヤミンへ出した手紙の中で、「新しいものにおいて古いものへの遡行がなされる」ことと、「最新のものがそれ自体、仮象ないし幻像として、古いもの」であることを...
『10+1』 No.21 (トーキョー・リサイクル計画──作る都市から使う都市へ) | pp.30-31
[新・都市の下層民 6]
0 一九二〇年代のベルリン、およびパリを活写したベンヤミンの『一方通行路』には、「物乞い、物売り、お断り!」という短い断章がある。実際にパリやベルリンの街を歩いてみれば、容易に、ベンヤミンが「南国の乞食」と呼んだアジア・アフリカ系移民と思われる活発な物乞い、胡散臭い物売り、あるいは職を求めてうろつき回る男たちの多さに気...
『10+1』 No.19 (都市/建築クロニクル 1990-2000) | pp.26-26
[新・都市の下層民 5]
0 『完全自殺マニュアル』に見られるように、「自殺」というテーマは、サブカルチャーの一部門として今日立派に自律し始めている。フリーライターの浅野智明氏によれば、つまり、自殺(未遂)を飯のタネにして生活している自殺ライターが生存できるほど「自殺」というテーマは、その読者層をすでに獲得しているというわけである。なるほど、イ...
『10+1』 No.18 (住宅建築スタディ──住むことと建てることの現在) | pp.29-30
[新・都市の下層民 1]
0 F・カフカの「断食芸人」は、一九世紀末の都市住民の欲望の変遷を浮かび上がらせる格好の参照点となっている。つまり「断食芸人」は、食物連鎖を断ち切った求道者に与えられる賞賛のアウラが、見世物化されることによって消費し尽される──そのような最後の徒花としての「断食芸人」を描き出しているのだと言えよう。見捨てられた「断食芸...
『10+1』 No.14 (現代建築批評の方法──身体/ジェンダー/建築) | pp.37-38
[新・都市の下層民 2]
0 数年ぶりにカフカの『変身』を読み直してみた。驚いたことに、以前読んだ時にはそのままにしてあった不透明さが消えたように思った。以前は、『変身』を多分にバロウズの影響の下で読んでいたように思う。言わば、ユダヤ人の生活不安や自己嫌悪というものを動物変成譚的なテーマへと昇華させた幻想小説として読んでいたわけである。しかし、...
『10+1』 No.15 (交通空間としての都市──線/ストリート/フィルム・ノワール) | pp.48-49
[新・都市の下層民 4]
0 カフカの小説の始まりは、いつも唐突である。「変身』の冒頭は、グレゴールが悪夢から目覚めるシーンによって始められる。しかし、奇妙なことにその悪夢の内容については一切触れられていないのである。また『審判』においては、逮捕に来た者達によってヨーゼフ・Kが起こされるシーンから始まってる。この時のKは、向こう側に住んでいる老...
『10+1』 No.17 (バウハウス 1919-1999) | pp.31-32
[論考]
ストリートをめぐって 小倉 「ストリート」という言葉から思い浮かぶのは、寺山修司の「書を捨てよ街へ出よう」というメッセージですね。60年代後半の街頭闘争の流れのなかにそれはあったと思いますが、60年代後半に文化運動なり学生運動をやっていた膨大な人材が、70年代を通じて都市開発あるいは街の風景を演出し風景を作る側(文化産...
『10+1』 No.19 (都市/建築クロニクル 1990-2000) | pp.88-96