アトリエ・ワン&リサイクル・エクスプロージョンズ
Atelier Bow-Wow & Recycle Explosions
塚本由晴、貝島桃代
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山本匠一郎、臼井敬太郎、富田文代、中川聡、山崎謙一、寳神尚史、市川夏子、堀江香里、前島彩子、高橋裕美、木下靖史、小林哲、武藤弥、芦田暢人、寺田郁子、今泉潤
モノの軸 戦略の軸
建設の飽和点に達した東京に対してわれわれは何ができるだろうか。もはや白紙に戻すことも、リセットすることもできない東京の内側から、どんな未来を生み出していけるだろうか。私たちは混沌とした東京の現状にインスパイアされる一方で、何か空間的にはいまひとつ煮え切らずくすぶり続ける東京の姿に不満足を感じている。その不満足、機能不全自体にもう慣れっこになっていて、解消されうるものなのかどうかすらわからなくなりかけている。あらゆる欲望によって形成された都市、東京は矛盾だらけであるが、そうした矛盾にこそ全体へとつながる筋道を垣間見ることができる。周りを注意深く見回してみると、渾然とした都市の中に多くのムダなもの、過剰なもの、空白、隙間を発見することができる。それらは、近代の都市づくりが意図せずつくりだしたものであったり、経済の荒波が残した傷跡、あるいは管理区域の狭間に生じたエアポケットであるかもしれない。そこへ予定外のヴァイタリティを挿入することによって、東京の潜在的な可能性や魅力を引き出すことができるのではないだろうか。ふだん、目にしていながら気にも留めなかったそれら都市の副産物を、都市空間をかたちづくるための素材として収集し、積極的かつ発明的な使用方法を提案すること。それは都市空間のリサイクルによる都市へのゲリラ的介入であり、都市に隠された潜在力を引き出そうとしていくという意味で、新しいタイプの都市デザイン(計画)と呼べるだろう。
この「トーキョー・リサイクル・ガイドブック」は近年のリサイクル概念の爆発的普及が都市空間そのものにまで及んだものである。なかにはばからしい荒唐無稽なアイディアも出てくる。でもそれでよいのだ。リサイクルという概念を都市空間そのものにあてはめる試みは東京ではまだ始まったばかりだから、勝手がわからないのは当然である。そこから何かひとつでも残って発展していけばよい。
一つひとつのリサイクル案はフォトコラージュを用いてヴィジュアル化されている。東京の現状写真をそのまま素材として、そこに提案を重ね合わせて行なったこのプロジェクトが、あたかも未来東京の名(迷?)場面集のごとき様相を呈しているのは実に楽しいことではないか。(YT┼KU)
01:ボクササイズ銭湯
公共の風呂「銭湯」の利用者数の減少は顕著である。この漫画『愛米』の主な舞台である銭湯では営業時間外にフィットネス・クラブとして利用されている。これは「銭湯」をうまく時間差利用し、またその空間がもつ性能(板の間であること、巨大な鏡が壁一面に装着されていること、絶妙な声の響きをつくり出す天井高をもっていること、すぐそこで運動後の汗を流せること)を最大限に有効利用したアイディアである。(TY+SK)
02:富士山ライトアップ
今日、東京から「富士山」を観察できるのは雨上がりのよく晴れた日中だけである。その日は富士山のその巨大なボディを東京にいても堪能できるし、逆にそのとき、富士山は風景として東京の一部になる。夜間、「赤富士」、「青富士」、「乳富士」など、色とりどりの姿によって東京の風景を遠隔から演出する、富士山のライトアップの風景の提案。
(TY+WM)
03:きもだめし
都心には青山霊園をはじめとして多くの墓地が散在する。墓地は神聖にして、人の出入りは決して多くない都市のエアポケットである。夜の時間帯、墓地は究極の無人空地となる。その空地は恐怖感に包まれると同時に、恐いもの見たさという人の小悪魔的興味をくすぐる装置となる。ここで提案するのは夏の夜中にのみ開園するきもだめし園。部屋を冷やさず肝を冷やせ。どんなお化け屋敷よりもリアリティに溢れる。(SN+KU)
04:東京タワー日時計
東京のランドマーク、東京タワーを日時計に見立て、高層ビルや都市公園の配列を文字盤に見立てる。何にもならない巨大な影の都市内有効利用の提案。東京タワーと周辺環境がつくり出す、新たなユニット。(YK)
05:屋台パーキング
渋谷区代官山の24hパーキングには、いまでは周辺の人にはなじみとなったカレー屋、クレープ屋、コーヒー屋の屋台車が突然現われる。このパーキング営業は、警察による違法駐車取り締まりを避けるために始められたのだが、その評判が人を呼び、週に1回はたいてい現われるようになった。都市の空白をとりあえず埋めている時間制パーキングの積極的な利用法。(NI)
06:列車ホテル山手
午前1時も過ぎると、駅は終電に間に合わず路頭に迷う人々で溢れかえる。これは、深夜の山手線のプラットホームに寝台車を横付けし、ホテルとして営業する提案。鉄道の高速化に伴って出番が減っている寝台客車と、深夜は無人状態になる駅プラットホームの活用法。(FT+KU)
07:ハイウェイ・サーキット
首都高環状線から、一般車を締め出しF1レースを開催する。ビルの窓、屋上、非常階段からタダで観戦することができる。このような既存の交通施設の読み換えとしては、赤信号で停まった車同士が青信号を合図にスタートし次の信号まで競争する「シグナル・グランプリ」などの事例もある。(KU)
08:地下道ホテル
都心部には、縦横無尽に走る地下道空間が存在している。これらの空間は、人々の活動の滞る深夜から早朝にかけて閉鎖されており、膨大な屋内空間の時間的な空白を有している。ここに収納可能な簡易な設備を設けることで、多大な収容能力をもった宿泊施設として利用する。(KY)
09:ヘイはうす
敷地の境界線として、外部からの視線を遮ったり侵入を防ぐといったネガティヴな機能しかもたない塀の壁面に、住宅の機能をブレンドする。周長数キロにもおよぶ拘置所の塀に二層の集合住宅を付加した、厚さ数メートルの壁面居住。拘置所と周辺環境の緩衝帯にもなる。(FT)
10:非常見物階段
ある階数と規模を超える建物には非常階段の設置が義務づけられている。非常時とは火災、地震などめったに起こりえない事件であるから、それらは、仕方がないような感じで、たいていは建物の裏手に取り付けられ、めったなことでは使われない。しかし、考えようによっては、優勝パレード、マラソン、花火大会なども非常時と考えられるだろう。これは、そうした「めでたい」非常時に非常階段を見物のスペースとして効果的に利用する提案。(NI+HT)
11:裏看板ストーリート
首都高速道路脇に立ち並ぶビル群の頭上には、通常前方を向いて進むわれわれの視界に直に飛び込むように設置されたコマーシャル・ボードが連続している。逆にいえば前方を向かずに進む者──例えば後部座席に後ろ向きに座する子ども──にとっては全く効果のないものである。これは看板の裏側を子ども向けプレゼンテーション(例えば10コマ漫画)とした看板裏利用の提案。(TY+NI+HT)
12:路地裏ネットワーク
外へ出てあたりを見渡せば、この街はどこもかしこも隙間だらけである。普段は目も向けないようなこの空間を、拡張された歩行空間として活用する。敷地境界線の描き出す緻密かつ広大なネットワーク図が浮かび上がる。(KY)
13:24時間パーキング
Times24は、2年間の短期契約と周辺地域との適応能力から高い普及率を維持しており、現在では2300カ所、2万2000台の管理運営を行ない、全国で空地の有効活用を実現している。最近では、こうして形成された広大なネットワークをもとに、駐車場の予約・情報サービスの提供、地下への大型防火水槽の埋設なども行なっている。(NI+JI)
14:放置自転車型充電器
駅前を埋め尽くす放置自転車の山は、どこの自治体でも頭を抱える問題である。近年のモバイルツールの普及率は圧倒的なものがあるが、それは電力の携帯化を推し進めることでもある。これはそうした状況に対して、自転車を放置する代償として、他人のノートパソコン、携帯電話などに自分でペダルを踏んで充電してあげるという提案。(KH)
15:残土スケープ
建築現場、土木現場からは大量の残土が発生する。東京都内の工事現場から排出された年間の建設発生土は1996年度で約1800万平方メートルである。これは実に東京ドーム15杯分に相当する量である。現在この残土回収のシステムはバラバラであるが、これらをうまく組織すれば、残土を1カ所(例えば湾岸)に集中させて、ひとつの大きな山をつくることもできる。湾岸から東京を一望のもとに俯瞰できる残土山の提案。(TY)
16:フリップメトロ
ほとんど地中を走行する地下鉄ではガラス窓はあっても窓外に景色はない。これは、地下トンネルの退屈な壁面に連続画像を並べ、人の視覚の単純構造を利用した地下鉄パラパラマンガ装置の提案。(SN)
17:屋上天国
かつて建築家ル・コルビュジエは近代建築5つの要点のひとつに「屋上庭園」をかかげていたが、現在、東京の屋上の多くは給水タンク、粗大ゴミ、もしくは何もないがら空きのスペースであり、おおよそは彼のテーゼに反したネガティヴな使い方である。「屋上菜園」、「屋上テニス」、「屋上日焼けサロン」、「屋上キャンプ」、「屋上水田」、「屋上ビニールハウス」、「屋上プール」、「屋上露天風呂」。残された開拓のスペースとしての「屋上」の有効利用の提案。(TY+SK)
18:ビル・クライミング
東京に乱立するビル群は、しかし整然とその壁面を連ねている。その壁に、「登る」という行動を結びつけることで、ビル・クライミングといういままでにない「都市型スポーツ」が開発されている。これはそうしたビル・クライミングを拡大した、ビル・クライミング渓谷の提案。(KY+HH)
19:都庁でバンジー
都庁のツインタワーとそのあいだの隙間を利用したパフォーマンス 施設。例えば、ツインタワーをバンジージャンプ台と見立ててみよう。都知事立候補者は演説代わりに、その心意気、都政に対する覚悟を逆バンジージャンプでアピールする。(KU)
20:煙突湯
元の煙突は高井戸の清掃工場のものである。その高さ160メートル、頂上部の直径は10メートル、その面積78.5平方メートルといわれる。この高度、開放度にして適当な広さを有効利用しない手はない。例えば、廃熱を利用しての展望露天風呂を想定してみよう。煙突の縁にもたれて眼下の景色も楽しむのもよいだろうし、一杯やるのもよいだろう。ただし鼻歌にはエコーはかからない。(KU)
21: トマト打ちっぱなし
グラウンドの囲いによく見られる防球ネット。ここではネットを、活着性に優れた垂直の栽培環境として評価する。風通しと日当たりが抜群のネットは、例えばトマトを育成することで、使用者、歩行者には日陰を、周辺住民には目の潤いを、そして経営者には最高の収穫をもたらす。地球温暖化の阻止、酸素濃度の向上などへの貢献もその魅力として同時に挙げておきたい。(HH+SN)
22:何でもボックス
都内には多くの電話ボックスが存在するが、携帯電話の普及によって、その空間を、情報を得るための端末として捉えれば、もっと多様な情報交換ツールとして利用できるのではないだろうか。クラブのフライヤー、テレホンクラブ等のピンクチラシを電話ボックス中にはりまくろう。類似例として電話ボックスを都市のギャラリーとして見立てる「電話ボックス博物館」がある。(TY)
23:頭上動物園
東京のあらゆる場所に張り巡らされている電線のネットワーク性に注目してみる。現在その電線は、昨年6月の麻布のサル事件にみられるように、鳥などの小動物たちに、人間とはレヴェルの異なる生息場所を与えている。そう考えてみると、頭上には動物園が広がっているではないか。(SN)
24:川ればー
東京を流れる川は、現在は都市の影になっていたり、よくても景色としてながめられているに過ぎず、インフラとして街を横断して存在しているのにもかかわらず積極的に利用されていない。この川を川幅や橋、岸の状況を反映して、競泳用、飛び込み用、水球用プール、水族館として利用する提案。(AM+WM)
25:弥七ファサード
高速道路でよく見かけるオレンジ色の反射板。これは排気ガスによる反射板の表面の汚れを猛スピードで通過する車の風を利用し掃除する「弥七型デリネーター」と名付けられた発明品である。高速道路脇に立つビル群は排ガスによる汚れに頭を悩ませているが、この「弥七」をビルのファサードに取り付けてしまえば、車の通過量に比例しながら自動的にビル表面を洗浄し、そのクリーニング・コストを抑えることができる。(TY+KU)
26:ふらっとプラット・ゴルフ
今日、都心部において新たに100メートル以上の長さを有する土地を確保することは困難である。しかし、駅のホームの屋根上部は、こうした土地不足の東京において、交通至便であり、かつ非常に長い面積を確保できる隠れたスペースである。その使用の性格上こういった非常に長いスペースを必要とする用途はいろいろと考えられるが、ここでは山手線を移動しながら各ホールをまわる都内周遊ゴルフ場を提案する。(NI+IT+TY)
27:ハイウェイコロシアム
東京湾レインボーブリッジは東京都土木事業部が「ベイブリッジに勝る美しいもの」を追求して計画された橋梁である。芝浦付近のランプには、螺旋を描く特異な形状が浮かび上がっており、ブリッジ上から中心を見下ろすと、船着き場として利用されている防波堤が舞台の花道のように海へ向かって真っ直ぐに伸びている。これはレインボーブリッジのランプの下部一周に観客用デッキを渡し、全体を円形劇場としたハイウェイ・スタジアムの提案。(FT+KH)
28:擁壁ハウス
線路脇の切り立った擁壁内部をくり抜いて、居住機能を挿入する。ちょっとうるさいけれど、そのかわり家賃は安く設定される。建築と土木のミクスチャー。(NI)
29:ツール・ド・高架下
都心にはり巡らされる首都高速。重なり、合流する様は三次元にドラマチックな風景を演出している。しかし高架下は薄暗い川であったりただの隙き間になっている。その高架下に自転車用高速サイクリング・ロードを付加する。排気ガスも出さず化石燃料も使わないエコな乗り物、自転車。渋滞知らずのその道は、競輪場のような新しい速度を風景に加える。(HT+YK)
30:グラフィティ・ビル
東急東横線桜木町駅付近の高架下には、長さ約300メートルにわたってグラフィティが描かれている。これらは管理者が意図したものではなく、ストリート・アーティスト等が高架下壁面をキャンバスと見たてて、ゲリラ的に描いたもので、いまや名所のひとつとして認められている。無味乾燥な古い公共建築の壁面がそのターゲットとなれば、ペンキの塗り替えをかねたパブリック・アートになる。(FT)
31:レインボーラウンジ
東京湾岸では、レインボーブリッジに代表されるような大規模な土木構造物が数多く見られる。この構造部には漠然とした空洞が存在しており、レインボーブリッジはこの空洞を利用して展望台を設けている。芝浦・台場それぞれにそびえる地上30メートルの巨大なアンカレイジからは、東京湾岸から都心広域のダイナミックな眺望を体験できる。(KY)
32:オフィスハウジング
現在、都心部では不況の影響によるオフィスの空室化が目立っている。また、インターネットやSOHOなど、場所に依存しないビジネス形態も普及しはじめている。これは、オフィスビルの余白に居住機能を挿入、オフィスの区画を小割りにするとともに、都心における職住混在の可能性を開くビルディング・タイプの提案。(KY)
33:観・汗・姦覧車
読売ランドは1999年夏より期間限定で、観覧車の窓に目隠しとしてのカーテンをつけた。本来景色を楽しむアトラクションとしての観覧車は終わりを告げるのだろうか。今日の観覧車は眺望施設としてよりも密室としての新しい可能性を模索しているようだ。観覧車室内を緊張感、親密感、一方で開放感あふれる性行為空間として捉え直した実例。(KU)
34:送電線リフト
東京の空中を縦横無尽に網羅する高圧送電線。東京を中心として放射線状に蜘蛛の巣にも似た送電線ネットワークが形成されている。この送電線を辿っていくと山間部、 臨海部へと至る。都心部からはるかな遠隔地を結ぶネットワークを交通機関として機能を付加させる。例えばスキー場のリフトを一本通してみる。それは渋滞知らずののんびり空中移動システム、あなたの町から山へ、海へとダイレクト・アクセス。(KU)
35:映画坂
近年、広場に面したビルファサードに巨大なテレヴィジョンをほどこした現代版街頭TVがある種の新しい都市機能を獲得している。映画館にみられる、スクリーンとそれを見やすくするための勾配のついた客席という関係を考えると、日頃何気なく歩いている坂の勾配(客席)と対面するビル壁面(スクリーン)という関係は申し分のない屋外映画館になりうる。(KY+YK)
36:ボート・イン・シアター
建築資材となる木材の流通方法はかつての丸太流通から、産地製材型の流通へと大幅にシフトチェンジし、貯木場はもぬけの殻となりつつある。この貯木場というスペースは海を表層的に仕切ることで海上に秩序を与えている。このような秩序をドライヴインならぬ停泊施設と読み替え、ボートに乗ったまま見られる移動海上映画館とした貯木場再利用の提案。(SN)
37:廃船デパート
現在、他の交通機関の発展から客船への需要が激減している。1997年に休止となった木更津−川崎間を運行していたフェリー4隻は、シンガポールと韓国に2隻ずつ引き取られて再利用されている。こういった格安購入可能な廃船を港に寄せ集めて、一大ショッピング・タウンをつくる。客船を交通機関から、海岸に接置されたビルディング・タイプとして読み替えた、海上移動型百貨店の提案。(FT)
38:マンホール便所
東京で大災害がおきて都市機能がマヒしたときに最も困るのはトイレである。これは、マンホールの中に非常用として仮設トイレを普段から収納する仕組みである。いざというときには、下水へと流せばすむようになる。あのスタジオジブリの駐輪場のマンホールにも、非常用としてのマンホール便所が設置されている。(SN)
39:湾岸スイマー
東京湾岸沿いは大部分がソリッドな堤防として造成されており、普段われわれは、海から隔絶しているという疎外感を持たざるをえない。これは防波堤沿いの水面下にプラットホームを浮かべて親水性の高い浅瀬を作り出す提案。(FT)
40:偶然ヒルサイドテラスしかもWOODY
バブル期の過度な地上げによって、いまもなお虫食い状に空地が点々と残されている都心の木造住宅密集地。これらをまとまりとして評価してみると、建物の間に連続した外部パブリック・スペースを有した代官山ヒルサイドテラスに似た空間ができあがっているとも言える。しかも木を使っているので和み度が高い。(KY+MA)
41:歩道橋カット
東京23区には約900もの歩道橋が現存する。歩道橋は歩車分離の原則のもとに車を優先した結果、歩行者に
階段の上下運動を強いるものである。とても面倒くさいので、利用者は必ずしも多くない。そこで利用率の乏しい歩道橋を、大胆にも二つにカットする。分断された歩道橋は当初の移動のための装置であることをやめて、都市を新たな視点で眺める装置に生まれ変わり、眺望のきくパフォーマンスの場として利用され
る。(FT+KU)
42:センモンカ公園
東京都内にある公園の総数は大小含めて9349カ所にまでのぼり、最近では、「公園デビュー」なる現象を引き起こすなど、都市文化の不可解な細部を引きうけている。これは、公園がもっている基本要素(滑り台、砂場、鉄棒、植物)を一種類の要素に絞って、専門化させた公園群の提案。この操作により、それぞれの公園はより個性的になり、相対的に価値を高める。
(AM+KY+WM)
43:オープントレイン
時速80キロメートルで東京を疾走する電車は、本来の移動という側面以外では、「人間缶詰め」、「痴漢」といったおおよそネガティヴな空間としての評価がほとんどである。これは、電車の一部の車両の上部を切り落とした、屋外型のオープン・トレインの提案。サラリーマンのストレス解消のための日常的なジェットコースターとも考えられるし、ヘヴィ・スモーカーの避難場所にもなるだろうし、体感型の東京観光トレインとしてもその利用価値は高い。(TY)
44:廃墟パーク
都営新宿線東大島駅付近ではスーパー堤防の建設が進められており、その中に地上10メートル程度盛土された公園がある。この一角には、かつての水門が残っており、その上部3分の1ほどが顔を出したまま埋設されている。産業構造の変化によって廃墟と化したこの水門も、現在はこの公園の迫力のあるオブジェとして活用されている。(KY)