ここに掲載した画像はすべて、一秒あたり三〇フレームの動画を撮影し、フレームごとに一ピクセル幅のみの画像を抽出しつなぎあわせたものである。つまり、カメラを移動させながら撮影したものは移動に沿った「風景」を、カメラを固定したものはある地点の「時間」経過を、一秒あたり三〇ピクセルの速度でスキャンしたものとなる。
「風景スキャン」では、撮影という行為に伴う運動が、隣り合った画素のズレとして現像される。移動とともに景色を認識し続けるという撮影者自身の連続的な体験は、画素のズレの集積を生み、風景の「うねり」となって記録される。
「時間スキャン」の原理そのものは、陸上競技や競馬の着順判定に用いられるスリットカメラなどと同様であるが、ここではその視線の先を、ゴールライン上の競走馬の直線状の運動ではなく、さまざまな方向と速度が生まれては消える、雑踏などの運動に向けている。
都市の風景は、静的な構造物だけでなく、さまざまな運動の群れによってつねにつくりだし続けられている。これらのスキャンで、撮影者自身も含めたその運動のリズムやダイナミズムを記録しようと試みた。
風景スキャン(下北沢2007.05.13 17:10-17:18)
時間スキャン(ハチ公前2007.05.02 16:30-16:33)