二年間にわたった連載も今回で最終回となった。都市がすべての者に対して開かれてあること。そのためには、「非病理的な」建築、われわれをもう一度デラシネとするような建築が必要である。それがこの連載のテーマだった。最終回の今回は、そうした建築を目指した者のひとりとして、バックミンスター・フラー(=BF)を取り上げようと思う。
一九九六年四月一〇日、『Buckminster Fuller: Thinking Out Loud』と題されたドキュメントが、アメリカのPBS社によって放映された。製作・監督・脚本をつとめたK・サイモンとK・グッドマンは、ジョン・ケージ、アーサー・ペン、マース・カニンガム、フィリップ・ジョンソン(=PJ)に直接インタビューを行なった。その抄録が、PBS社のホーム・ページ上で公開されている★一。
前者三人は伝説のブラック・マウンテン・カレッジの関係者。一方、PJはアメリカ建築業界のドン。このドキュメンタリーに関するパネル・ディスカッションでも彼はこう述べる。
わたしがBFのことが好きではないという点で、私はここでは少数派です。どうしてまた私が招待されたのか分かりません。当惑の極みです。
PJがBFに敵意を抱いた理由はこうである。
BFは建築家ではありませんでした。彼は建築家の振りをし続けていたのです。それが鬱陶しかった。