RUN BY LIXIL Publishingheader patron logo deviderLIXIL Corporation LOGO

HOME>BACKNUMBER>『10+1』 No.46>ARTICLE

>
特殊技術としてのシェルター | 野崎健次
Nuclear Shelter | Kenji Nozaki
掲載『10+1』 No.46 (特集=宇宙建築、あるいはArchitectural Limits──極地建築を考える, 2007年03月発行) pp.94-95

地球上の建築で、最も過酷な外力が加わることを想定しているもののひとつに、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射管制センター(Launch Control Center)がある。冷戦たけなわの一九六〇年代から九〇年代初めにかけて、米国とソ連の核大国は、万が一自国が核攻撃を受けた時、必ず相手国を核ミサイルで報復できるように、大陸間弾道ミサイル、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)および戦略爆撃機が相手の第一撃で壊滅しない工夫をしていた。潜水艦や爆撃機の場合は動き回れるので、相手の攻撃をかわしやすいが、地上(地中)に設置した大陸間弾道ミサイルの場合は、相手に設置場所が知られているため、核攻撃を受けてもある程度耐えられる構造が求められていた。
ソ連が米国の大陸間弾道ミサイルを破壊する目的で配備したR36M2型の大陸間弾道ミサイル(西側ではSS-18 Satan Mod-5と呼んでいる)は広島型原爆の六〇倍の、七五〇キロトンの水爆弾頭を一〇基つけて、各々が別の目標を狙えるMIRVとなっていた。この弾頭が地表で爆発すると、半径一五〇メートル、深さ二〇メートルのクレーターができると言われている。一万キロメートルを三〇分で飛翔した後のこのソ連の核弾頭の命中精度CEP(半数必中界)は二五〇メートル、つまり確率的に半分のミサイルが半径二五〇メートルの円の中に命中するくらいの精度であり、核爆発でできるクレーターから免れた米国の発射管制センターは生き残るように設計されていた。
図1は米国のミニットマンⅢ型の大陸間弾道ミサイルの発射管制センターの図面である。ミサイル本体を収納するミサイルサイロは無人で、ひとつの発射管制センターで一〇基のミサイルの発射を受け持っており、敵の一発の弾頭で同時に破壊されないように、ミサイル管制センターおよびミサイルサイロの間隔は五─一二キロメートル離して設置されている。発射管制センターには常時二名の発射管制官が二四時間体制で配置についており、何事もなければ一二時間で次の二名に引き継がれる。しかし一旦警戒態勢あるいは核戦争になると、外界と遮断され、数週間にわたって電力供給、生命維持システムが稼動し、ミサイルの発射が可能なようになっている。発射管制センターの構造は、地下一〇メートルほどの深さに設置されたまゆの形をした直径八・七メートル、長さ一六・二メートル、厚さ一・二メートルの外皮の中に、長さ八・四メートル、幅三・六メートル、高さ二・七メートルの、管制官が働き生活する「箱」が収められている。それは外皮部分にある八トンの扉で外界と遮断されている。「箱」は外皮の天井から四カ所の衝撃吸収装置を介して吊られていて、至近距離での核爆発に伴う、猛烈な衝撃から内部の管制官と機器類を守っている。さらに、内部にある管制官の座席には身体を固定するためのベルトがあるのはもちろん、冷蔵庫、電子レンジ、コーヒーポットに至るまで強固に固定してある。トイレおよびベッドがひとり分あり、最低限の生活ができるようになっている。狭い所にたくさんの機器類があるため騒音はかなり酷いとのことである。
また、攻撃により地下に通じるエレベーターや通路が埋まってしまったときに備え、非常脱出口が一カ所あるが、一〇メートル以上の深さから人力で地上に出ることは困難なように思われる。この管制センターは、外部からの一三五気圧以上の圧力に耐えるように設計されていると言われているが、ソ連のSS─18がひとつの管制センターに二発ずつの核弾頭で全面攻撃をすればほとんどの管制センターが破壊されてしまうという試算もあった。そこで現在米国では、万が一すべての管制センターが破壊されても、空中の航空機からミサイルを発射するシステムを構築して対抗している。現在配備されている五〇〇基のミニットマンⅢ型ミサイル用の五〇カ所の管制センターは、今後も二〇二〇年までは使われる予定である。
今後の方向性として、各国とも重要な設備は地下数百メートルに設置しようとしているようだが、詳細は不明である。

1──ミニットマンIIIの発射管制センター図面 出典=http://memory.loc.gov/ammem/index.html

1──ミニットマンIIIの発射管制センター図面
出典=http://memory.loc.gov/ammem/index.html

2──ミニットマンIIIの発射管制センター(内部) 出典=http://memory.loc.gov/cgi-bin/displayPhoto.pl?path=/pnp/habshaer/co/co04

2──ミニットマンIIIの発射管制センター(内部)
出典=http://memory.loc.gov/cgi-bin/displayPhoto.pl?path=/pnp/habshaer/co/co04

3──ミニットマンの発射管制センター(建設中) 出典=http://www.geocities.com/minuteman_missile/photo_gallery1.html

3──ミニットマンの発射管制センター(建設中)
出典=http://www.geocities.com/minuteman_missile/photo_gallery1.html


4──ミニットマンⅢの発射管制センターおよび地上施設 出典=http://www.geocities.com/minuteman_missile/images/diagram_MM_MAF.gif

4──ミニットマンⅢの発射管制センターおよび地上施設
出典=http://www.geocities.com/minuteman_missile/images/diagram_MM_MAF.gif

5──ミニットマンIIIのミサイルサイロ 出典=http://www.geocities.com/minuteman_missile/images/diagram_MM_silo.gif

5──ミニットマンIIIのミサイルサイロ
出典=http://www.geocities.com/minuteman_missile/images/diagram_MM_silo.gif

>野崎健次(ノザキケンジ)

1956年生
清水建設技術研究所。建築環境工学、宇宙工学、エネルギー工学。

>『10+1』 No.46

特集=特集=宇宙建築、あるいはArchitectural Limits──極地建築を考える