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都市連鎖研究体プロジェクト2:オバケミニ開発 | 都市連鎖研究体
Catenated Design project 2: Haunted Housing | Laboratory for Catenated Cities
掲載『10+1』 No.37 (先行デザイン宣言──都市のかたち/生成の手法, 2004年12月発行) pp.102-105

課題:既存の街に溶解するミニ開発を提案せよ

条件:小さくとも豊かな環境を作ること


問題・方針

ミニ開発とは、大都市やその近郊に見られる小規模な戸建て住宅群開発のことである。
細分化された敷地に建ち並ぶ小住宅は、その一つひとつが個性を強く主張しようとする。だが、その主張が行き過ぎるとかえって均質な街並みを作ってしまう。これはミニ開発が景観を阻害すると批判されるゆえんであり、早急に解決されなければならない課題である。
ミニ開発にはこのほか、建て詰まりによる防災面の危険、居住環境の悪化なども指摘される。しかしその一方で、一定基準以上の質を保障されたこれら比較的安価な戸建て住宅への需要は依然として高いものである。
たとえ条件の悪い土地であっても、敷地の細分化により柔軟で合理的な土地利用が可能となるため、ミニ開発を試みる者は後を絶たないのが現状である。
本計画「オバケミニ開発」では、個々の家の豊かな住環境を実現することはもちろん、全体としてまとまりがあり、周囲の環境とも調和する住宅地開発を目的とする。それはあたかも以前からそこにあったかのような住宅地となる。

手法

一、バクシンチ(BAKUSHINCHI)──あるべき地割りを見つける方法
敷地から半径一〇〇メートルを空白化する。空白の外側に浮かび上がったかたちから適切なものを選びとり、敷地内部の道として取り込む。
効用:近隣との関係性のみにとらわれた近視眼的な計画を防ぎ、都市に溶け込むような宅地割りを行なうことができる。

二、フルヤシキ(FURUYASHIKI)──全体ヴォリュームの決定方法
土地の建蔽率から住宅の全体ヴォリュームを決定する。その形態は土地が細分化される以前にそこに建っていたであろう「古屋敷」を再現する。次に、そのヴォリュームを手法一より導いた地割りによって切断し、家のヴォリュームを決定する。さらに、家のヴォリュームを自由に回転させることによって空間をより変化のあるものとする。
効用:建蔽率による制限のもとで最大の建築面積を持つことが可能となる。個々の家に変化を持たせつつも、全体としてまとまったヴォリュームを形成することができる。

三、タタリガオ──ファサード決定の方法
住居内部の欲求に従って作られた窓の位置を立面のデザインによって調整する。立面にサブリミナルな顔を出現させる。
効用:ありふれた窓の並びが、住む人の「個性」を反映した味のあるものになる。それはタタリガオなのであるが……。

四、ロズ(地からの反転)(ROZU)──路地空間の形成とプランの決定方法
手法二で決定された家のヴォリュームを日照や風通し等を考慮して配置する。家のヴォリュームがさまざまな角度に回転されているため、多様な形態の路地空間が生まれる。その後、路地を活かすことを念頭に置きながらプランを決定していく。
効用:路地空間が豊かなものとなる。さらに、住居内部だけでプランを考える時よりも多様で魅力的なプランを作ることができる。

本案は、合理的土地利用・狭くとも安価な家の供給・一定基準を超える質の保障といったこれまでミニ開発が求められていたニーズを確実に満たしつつ、そのうえで都市が持つ先行形態への多様なアプローチを試みるものである。こういった意味で本案は社会性に基づいた案であり、二期開発、三期開発といった展開も充分に考えられる。(担当:福島ちあき+前川歩)

>『10+1』 No.37

特集=先行デザイン宣言──都市のかたち/生成の手法