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都市連鎖研究体 プロジェクト1:区画復元整理 | 都市連鎖研究体
Catenated Design project 1: Rezoning & Reconstruction | Laboratory for Catenated Cities
掲載『10+1』 No.37 (先行デザイン宣言──都市のかたち/生成の手法) pp.88-93

課題:人間の道と車の道共存の根本的解決

条件:必ずすべての住戸が、道に面する+路地に面する+駐車場をもつこと


問題・方針

近世以前の集落をもとに発展した場所は、狭い路地が複雑に入り組み、裏長屋が目立つ。それは近代性の欠如と解釈され、つねに区画整理の対象とされてきた。区画整理はそれまでの都市構造を消し去り、快適な車環境の確保を最優先とする論理、言わば「ミチの論理」によって全てを決定する。この計画を実施することによって、歴史が重層する多様な場所は均質なものへと変換されてしまうのである。
まず、区画整理を否定するわけにはいかない。なぜなら、それは快適な車空間を短期間のうちに実現させる、最も確実な方法だからである。しかし、ここで問題となるのは、区画整理がその強烈な論理により車空間を作り出すだけにとどまらず、既存の集落構造の存続を断ち切ってしまうことである。

本プロジェクトはこうした問題を受け、次のことを目的とする。
人間の生活の履歴が詰まった路地空間、これを保存し、その一方で快適な車環境を作り上げる。これは、近世以前の集落構造を破壊することなく、近代的な計画を混在させることを意味している。この混在は如何に可能か。混在していながらも、両者がその魅力をそのままに自律することはできるのだろうか。

敷地

対象敷地は大阪市住吉区にある近世集落から発展した住宅地である。規模の異なる道路が複雑に入り混じり、多様な街区を形成している。そのためこの領域のみ道路整備が行なわれておらず、車社会への対応が果たされていない。この地に新たに区画整理が行なわれると仮定する。

計画手法

課題「人間の道と車の道共存の根本的解決」のために五つの計画段階を設定した。
各計画段階において有効と思われる五つの手法をカードを使って提案する。

一、道路計画──IRABU 走れメロス、誰よりも速く
車の走行に快適であると考えられる直線道路を既存の都市構造の上に通してゆく。直線道路はグリッド状であることが望ましく、この際、既存の路地の存在は考慮に入れないこととする。この直線道路は住民の生活にとってウラ空間となる。
効用:近代的な車環境が整備されることによって利便性が飛躍的に向上する。

二、路地計画──WEB ALLEY ひとつより二つの網の方が強い
既存の路地を繋ぐなどして、グリッド道路に囲まれることとなった区画内部に路地ネットワークを張り巡らせる。ここで、路地ネットワークは新設のグリッド道路とは無関係に形成される。それは住民の生活にとってオモテ空間となる。
効用:既存の路地が持つ多様性を保全できる。
現在の町に通る路地。それぞれの路地は袋小路になっており、生活のネットワークとはなっていない。
袋小路になった路地を近くの路地に繋げていく。この操作を続け、これを計画道路とはまったく無関係に大きな路地のネットワークをつくる。

三、配置計画──疑—KYOTO 王の輪に接する輪を描け
各住戸は必ず計画道路と路地の両方に面するように配置する。全ての住戸において車でのアプローチを可能とし、全ての住戸が人々の行き交う路地と密接な関係を保つ。
効用:利便性と多様性、二つを兼ね合わせる特異な空間構成が生まれる。全ての住戸にとってほぼ平等な環境を再分配することが可能となる。

四、奥行──NIMPH'S VISTA 見える人には見える奇跡のヴィスタ
車のスケールと路地のスケールが併存するヴォリュームを形成する。計画道路側の壁は高く切り立つように存在し、路地側の壁は低く人を招き入れるように存在する。計画道路の直線的な風景とそれに対照的な路地の複雑に入りくんだ風景を併存させる。
効用:直進する道路とは別の角度に発見的なヴィスタが生まれる。

五、壁面計画──ISLAM 複数の生活が形態を決定する
公共に面する壁は単純なルールによって傾ける。南側の建物は日光を妨げないように壁面を斜めにする。広場は明るく開放的に、密会場所は閉鎖的に。
効用:さまざまな性格を持った路地空間、住居の内部空間を獲得できる。
南側の建物の壁面を傾け採光を得る。
私的な路地空間は向かい合う建物の壁面を傾け、閉鎖感をつくる。
広場などのパブリックな空間は向かい合う建物の壁面を傾け、開放感をつくる。

「区画復元整理」は、既存の都市構造とグリッド道路を併存させるという点で、既存の都市構造を白紙にしたうえで行なわれる従来の区画整理とはまったく違うスタンスをとっている。区画整理の成果である利便性と既存の都市が持つ多様性という両者の利点を兼ね備える住宅地が実現できるのである。計画道路と路地のぶつかりによって生じる発見的な風景など、思わぬ副産物を獲得できることも本案の魅力である。
(担当:前川歩+福島ちあき)

模型、図面の制作にあたっては大阪市立大学建築学科/白幡晋矢、田村和也、中村浩和、松本宏喜、舩橋耕太郎、山田道子、米田沙知子、酒井雅男、鈴木貴大、堀野敏の協力を得た。記して謝意とする。

>『10+1』 No.37

特集=先行デザイン宣言──都市のかたち/生成の手法