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都市連鎖研究体 イントロダクション──The Tarots for Catenated Design | 都市連鎖研究体
Catenated Design: introduction──The Tarots for Catenated Design | Laboratory for Catenated Cities
掲載『10+1』 No.37 (先行デザイン宣言──都市のかたち/生成の手法) pp.77-82

連鎖式都市の建築を読む

都市連鎖研究体による[都市の書物の読み方]を紹介します。

方法
1. 書物内の挿図の大部分を抽出する。
2. 挿図の説明文を短いセンテンスで抜粋する。
3. 挿図、説明文ごとにカード化する。
4. それらを隣接して配置しセットとする。
5. それらセットを基本とし、連鎖的に関係づけられるセットを縦、横に配置する。
6. 複数のセットで構成されるシークエンスならびにマトリックスが構成される。セットを複数構成すると、ひとつの意味対応に対して同時に発見的に3つの対応が指定される。
7. そのマトリックス総体から、ある書物の隠れた構造が導きだされる。
(担当=中谷礼仁、福島ちあき、米田紗智子)

中谷礼仁、清水重敦(奈良文化財研究所)、大竹佳世、岡田愛、川崎剛明、林泰介(林泰介建築研究所)、福島ちあき、船橋耕太郎、前川歩、松本宏喜、山田道子、米田沙知子、渡辺菊眞(渡辺豊和建築工房)
特に表記のないものは、大阪市立大学所属

連鎖式  都市のいろいろ

世界には実に様々な都市があり、時間とともにその様相が変わっていきます。都市は地形、既存の都市形態、経済活動といった様々な条件と連鎖しますので、そのパタンは数え切れないほどあります。
しかし、まったく違う形態をしたいろいろな都市を、じっくり見てみますと、それらの中には共通したコンゲンもあることに気づきます。

純粋漁村[うまいものには、皆ムラがる]

人間の社会生活の純粋形態は漁村である。海という無尽の余剰に、各戸が直接的に、垂直に面している。ムラがるから村である。

コンデン[自給単位の閉鎖群]

徐々の開墾によって生まれた土地は、住居と田畑を1セットとした「細胞」が、すきまなくアメーバのように展開する。セットはそれだけで完結しているため、原理的には道を必要としない。

ミチ[王によってうたれたカンフル剤]

古代より道をひくのは王の役目であった。道は生活に対して先験的もしくは形而上的にふるまう。道は他者をつなげ、またある時は区切る。

キョウト[ミチに沿って建ち並んだ新・純粋漁村]

古来、貴族の宅地であった京都を経済の都市に変えたのは、ミチに面して建ち並んだ仮設のミセであった。これらが町家の原形であり、ミセは貴族が衰退するや否や正方形の宅地を奥のほうへ買いあさった。
正方形の宅地を四面から食いつぶすと、ミセの奥行きがまちまちになる。そのため中心に会所という「無縁」が生じた。

無縁[誰のものでもあり、誰のものでもない]

河原・橋の下といった場所は、その社会的空間としての存在が認識されていない。また裏路地・井戸端は誰のものでもないが不可避的に生み出される公共の場である。牽制しあいながら用いられる。それらはいずれも「無縁」ゆえの場所である。

シュクネギ[共有すべきものへの直接的接触の禁止]

余剰へのすべての成員による直接的アクセスに限界が生じた場合、「公共概念」が生じ、アクセスを象徴的にコントロールする。これは限界漁村「シュクネギ」に顕著に表われている。ピロティはシュクネギの垂直形態である。

作図=大竹佳世
図版出典=上から順に 高須賀晋+畑亮夫『日本の集落 第2巻』住宅建築別冊14(建築資料研究社、1984)、アジア航測株式会社編『航空写真でみる国土 第5集 日本の村落』(古今書院、1968)、Leonardo Nebevolo, The History of the City, Scolar Press, 1980、
住宅史研究会編『日本住宅史図集』(理工図書、1970)、『日本の歴史別冊 歴史を読みなおす10 中世を旅する人々──遍聖絵とともに』(朝日新聞社、1993)、野口徹『日本近世の都市と建築』(法政大学出版局、1992) 

都市とカード

カードはすべてである。それはほどけてしまった書物を連想させるから。
プレイング・カードを保証するのは、そのカード群がそれら全体として、何かしら完全なまとまり──物語──であったはずだという信用である。その証拠にわたしたちはたった1枚でもそのなかのカードをなくしてしまったら、もう途端にそのカードに対する興味をなくしてしまうのだ。ゲームはまだ始まったばかりというのに!
そしてその物語は、もうけっして元には戻らない。もちろんそのページに番号がふられていなかったとしたらの話ではあるが、ほどけてしまったページの順番を完全に復元することはできないのだ。
しかし1枚たりとも紛失しなかったら、そのカード群はそのときから独特の魅力をもちはじめる。複数のカードを見合わせながら、人はその断片の組み合わせからいくつもの物語の可能性を想起してしまう。そこには「すべて」があるはずなのだから、と。人間には、偶然の状態に意味を読み込む能力がある。どんなに些細なカードからも、私たちは本能的に啓示を読みとってしまうだろう。むしろ読み込めなかったら、どんなにこの世は不安と恐怖に満ちるだろうか。その場合、わたしたちは明日があることをどのようにして信じればよいのだろうか。
都市もまたすべてである。そしてその総体性は、完全な書物のそれよりも、むしろほどけたページとしてのカード群にこそ近接している。都市をかたちづくる要素を1枚1枚のカードに当てはめてみた場合、それらは確固たる、あるいは整理された順番を持たない。都市では原理上「すべて」が起こる可能性があるのだから。そしてカードが偶然に出会うかのように、そこから意味が発生するのだ。その組み合わせは数限りないだろう。わたしたち都市連鎖研究体が、カードをその考察と展開の主要モチーフにするのは、その構造が都市的だからである。実際にわたしたちはそれらカードの力によって考えが進み、助けられてきたのだ。
それらのカードにシリーズ(ナンバー)をふる必要はないようであるが、どうやらカテゴリーは存在する。

都市では、限られた場所に多数の人間がいて生活をしている。その基本的な条件から、都市的建造物と人間との間にどのようなダイアグラムが発生するのかを考えてみた。古今東西の都市の上空写真、町並みの写真、集住の形態、現代建築家による都市・建築作品をサンプリングした。もちろんそれらには豊饒な差異が存在する。しかしそれと同時に、さまざまな類型すべてに不可避的に内在する根源的な関係性をいくつか導き出すことが可能であるように思えた。
最初のモチーフを与えてくれたのは「飴に群がる蟻」の写真であった。それは生きるための余剰を求めて生物が集まるときの、最も単純かつすぐれたダイアグラムであった。この関係は海という無尽の余剰と漁村との関係にきわめて酷似していた。この基本構造をわたしたちは「純粋漁村」と名付けた。これを発端にしてわたしたちは余剰・公共空間に接続する人間・生活空間を基本モチーフとして6つのダイアグラムを発見することができた。これが先に示した6枚のコンゲンカードである。それらは具体的な形態を決定するわけではないが、具体的な経済・集住パタンが形成されるときの前提条件としての位置づけを強固に持っている。
それらコンゲンカードはお互いに重なり合うこともあり、また地形、既存の都市形態、経済活動といった個別的な条件とも連鎖しあう。各都市はそれら根源的な与条件を参照しつつ生み出された、複雑で妥当なかたちを備えるはずである。その結果は古今東西の都市から現在の優秀な都市計画にまで及びうると私たちは考えているが、その展開力は以降のプロジェクト案において検証いただきたい。
[都市連鎖研究体・中谷礼仁

都市連鎖研究体の記録

本研究体では過去二度の特集で成果報告をした。前々回は大阪を対象としてフィールドワークを行なうことで、都市がさまざまな時代の要素の堆積で成立していることを示した。前回は都市を成立させている層組のヴァリエーションを具体的に明らかにした。今回の特集では、前二回の都市連鎖的分析を基盤としたデザイン手法を提案する。
・本研究には、青山賢信先生より多くのご指導をいただいた。人間環境大学の青井哲人先生からは市区改正と区画整理との差異について、詳しくご教示いただいた。また本誌発表のプロジェクトは、大阪市立大学大学院学生、建築春秋塾学生による成果が大きく反映されたものとなった。記して謝意とする。
・本記事は、文部省科学研究費 課題番号14655224 「歴史的連鎖としての現代都市・居住空間の研究──大阪府下を対象として」による調査成果公開の一端である。
[二〇〇三年度後期大学院授業参加者]池田知余子、太田勇、岡田愛、吉川智史、小島和佳子、條昌子、福島ちあき、前川歩、山口陽登、山田拓也

>『10+1』 No.37

特集=先行デザイン宣言──都市のかたち/生成の手法

>中谷礼仁(ナカタニ・ノリヒト)

1965年 -
歴史工学家。早稲田大学創造理工学部准教授、編集出版組織体アセテート主宰。

>青井哲人(アオイ・アキヒト)

1970年 -
建築史・都市史。明治大学准教授。